オーベルジュの夜
まおです。
入籍2周年の記念と、私の誕生日のお祝い。
交際期間から含めて、このオーベルジュに宿泊するのは4回目です。
その当時の思い出話に花が咲き、そしてこれから先も、このオーベルジュで記念日を過ごそうと約束しました。
その夜は、当然のように仲良く手を繋いでベッドに入りました。
一樹さんに『腕枕しちゃおうかなぁ~』なんて言われて、盛大に吹き出しちゃった私。
改めてそんなこと言われると、可笑しいのと照れくさいので顔が赤くなったけど、闇夜に紛れて分らなかっただろう。
でも、腕枕をしながら一樹さんが話し出したのは、大真面目な話だった。
『これからも、まおさんの体調を最優先に生活していこう。
ここ最近は分院の仕事で忙しくしていて申し訳なかったけど、これからは、まおさんにのんびり過ごして貰えるように考えるよ。』
「でも私は、もう随分とのんびりさせてもらっちゃってるよぉ。」
『ならいいんだけど。これから先は、二人でもっと仲良くのんびり過ごそう。』
一樹さんは『二人で』を強調していた。
入籍して2年も経つんだもん。
一樹さんの言わんとしていることは分るよ。
#不妊症の定義
どこかで読んだけれど、健康な男女が2年間普通に夫婦生活をして子供が授からなければ・・・不妊って言うらしいね。
もしかして私のことかな?
だよね。
あんまり良い響きじゃないね。
不妊症って。
自分でもそうじゃないかなって思っていたから、驚きもしなければ悲しくもない。
一樹さんとも不妊治療はしない。
子供は授からなくても良い。
そう結論を出していたしね。
よく考えたんだ。
本当に子供が欲しいのか?
私は子供が好きなのか?
子育てをしたいのか?
答えは全てNOだったよ。
自己防衛的にそう思うようになったのかも知れない。
それでもいいや。
『まおさんさえ隣に居てくれたらそれでいい』
そう言ってくれる一樹さんの言葉を素直に信じるよ。
自分のDNAを残さないと考えると・・・
以前は寂しい気もしたけれど、双極性障害になって考えが変わった。
子供の居ない人生を想像するのに時間が掛かったけれど、今は心穏やかだ。
なのに、一樹さんの腕の中で涙がこぼれた。
一樹さんに気付かれないように、シーツの端でそっと涙を拭った。
よく泣くんだよ、私。