紫陽花公園で
まおです。
恋人時代から紫陽花公園をデートするのは、年中行事のようなものでした。
そんな思い出の紫陽花公園デートで、まさか、まさか、伯父様御夫妻と遭遇するなんて。
考えてみれば、伯父様御夫妻の自宅からも、車で15分ほどの距離。
遭遇する可能性はないわけではないですが、まさかのタイミングでした。
何を思ったか一樹さんは、私の背中に手を回し、私をグッと前へ押し出したのです。
私はびっくりして、一樹さんの腕を掴んで、一樹さんの後ろに隠れようとしました。
それでも前へ進もうとする一樹さんの顔を見上げると・・・
『何してるの、まおさん。行くよ!』
「え~っ、何で?嫌だよ私・・・」
『僕らが隠れる必要は全く無いじゃないか』
一樹さんの言うことは正しい。
正しいけど・・・
相手の腹の中
そうこうしていると、伯母様が伯父様の腕を取るようにして、来た道を引き返し始めました。
伯父様は不機嫌そうに伯母様の手を払いのけ、でも、ゆっくりと体の向きを変え、来た道を引き返し始めたのです。
心底、ホッとした私。
一樹さんは何も言わずに、スタスタと公園の奥へと歩き始めました。
少し早足の一樹さんが、伯父様御夫妻に追いついてしまうのが怖くて、私は一樹さんの腕にぎゅっとしがみつくようにして、他愛もない話を始めました。
私の話を聞きながら、少し歩くスピードを落とした一樹さん。
しばらくすると、曲がりくねった道の先に、伯父様御夫妻の姿は見えなくなっていました。
一樹さんも私も、以後、伯父様御夫妻のことには触れず。
紫陽花の話や、このあとのランチは何にしようかと、楽しい話題に切り替えました。
久し振りのドライブ。
ハプニングもありましたが、リフレッシュして帰宅しました。
スマホ
時間は夕方の6時過ぎたっだと思います。
一樹さんのスマホが鳴りました。
お義母様からでした。
いつも固定電話に掛けてくるお義母様が、一樹さんのスマホに直接掛けてくるときは、私に聞かせたくない話があるときです。
でも運悪く、私は一樹さんの隣に座っていました。
昼間、伯父様の件があった事は、二人ともすっかり忘れていましたので、一樹さんも何の警戒心もなくスマホのライン電話を取りました。
私は盗み聞きをするつもりはなかったのですが、おもむろに席を外すのも違うような気がして、隣で座って漏れ聞こえる声を聞いていました。
いつもと変わらず挨拶をする一樹さんとお義母様。
でもそれが終わると、お義母様の声のトーンが変わるのが分りました。
「今日、○○さん(伯父様の名)と、顔を合わせたんですって?」
どうしてお義母様が知っているの?