オーベルジュの夜
まおです。
この夜は、いつもと違うお部屋でした。
湖が少ししか見えない代りに、森の中を散策できる小径がありました。
前日の台風の雨で、足下がゆるいので、遠くまでは歩けません。
少し高台になった場所に、テーブルと椅子があって、そこまで一樹さんと手を繋いでお散歩しました。
足下が滑るので、何度も何度も振り返りながら、私の手を取ってくれる一樹さん。
『あー、これ、どっちかが転んだらアウトだなぁ~。巻き添えになるパターンだ(-_-;)』
ふたりとも、危険なのは分かっているけど、高台の先にある景色をどうしても見たかった。
5分ほどかけ、ゆっくりと登っていった。
するとそこは木々が開け、沢山の星が瞬いていた。
「うわぁ!キレイ☆」
思わず声に出てしまった。
何も感じない
何かを見て「美しい」と感じたのは、どのくらいぶりだろう。
うつ病になると、全てのことが色あせて見えてくる。
何をしても楽しくない。
お腹も減らないし、食べたいとも思わない。
食べても味が分からない。
全てのことに興味が湧かなくなる。
テレビも音楽も観たくないし聞きたくない。
仕事もどうでも良くなってくる。
お化粧をしようとか、髪を整えようとか、ましてや着替えも出来なくなる。
そんな生活を暫く送っていたのに、今日は、久し振りにワクワクした気持ちになった。
車の助手席で感じる風が、とても気持ち良いと感じた。
ラジオから流れる曲を「あっ、これ良い曲だな!」と思った。
久し振りに、お喋りな一樹さんの会話に、楽しんで付いて行けた。
一樹さんの気持ちを確認したい
「今日は、何だかすごく楽しい」
『薬が合ったのかな?良かったね。』
「でも、ちょっと心配なことがある」
『えっ?なに?』
「一樹さん、私のこと好き?」
『は?』
「もしかして、そろそろ愛想が尽きそう?」
『おいおい、何を言い出すかと思ったら、また(気持ちが)落ちて来ちゃったの?』
「お願い、別れるとか言わないで。元気になったら、ちゃんと家事もするし、良い奥さんになるから。だから離婚するとか言わないで(ToT)」
すごく情けない話だけれど、うつが重症になってから、一樹さんに捨てられるんじゃないかという不安が大きくなった。
生活の全てが不安なんだけれど、特に、一樹さんに捨てられて独りぼっちになるのが怖いのだ。
今の私は、一樹さんが居なくなったら、生きていけない。
一樹さんは手慣れたもので、笑いながら言う。
『今のところ、離婚なんてする気は全くないから。どちらかと言うと、まおさんの方から離婚して欲しいって言われそうな気がするよ(笑)』
愛情の口約束なんて、何の意味もないことは百も承知だけれど、それでも尋ねてみたくなるのだ。
そして何の保証もない言葉に、しばしの安らぎを求めてしまう。
一樹さんの腕に、必死にしがみついて「絶対だよ。約束だよ。」
そう懇願してしまう。
一樹さんは優しいから、笑いながら肩を抱いてくれる。
『約束するよ。ずっと一緒だよ。』
美しいものを美しいと思える。
それすら幸せなことなんだなぁと、まおさんのブログを見ていると再確認させられます。
旦那さまがまおさんを見捨てるなんてありっこない。
だから、あまり追い詰めないであげましょう。