後悔の意味を知る
まおです。
一樹さんは、マザコンを公言した。
そして、その理由を話し始めた。
それは、一樹さんの青春時代にさかのぼる。
以前にも少し書いたけれど、
一樹さんのお父様は早くに亡くなった。
一樹さんが大学生の時。
弟さんは高校生だったらしい。
ある夜、突然アパートの電話が鳴って、
お父様の死を知らされたそうだ。
本当に突然、逝ってしまったらしい。
もちろん死に目にも会えなかったと言った。
『あの時の後悔といったら・・・』
そう言って一樹さんは言葉を詰まらせた。
長い反抗期
当時、一樹さんとお父様の関係は、しっくりいっていなかったらしい。
会社の後を継いで欲しいと願うお父様と、歯科医師になりたかった一樹さん。
歯学部を受験する代わりに、別の大学も受験させられたり、何処までも平行線だったらしい。
結局、第一希望の歯学部に進学したことで、お父様との関係は更に悪化。
お母様が間に入って下さって、何とか親子関係を続けているような感じだったと言った。
「血の繋がった親子だから。いつかお父さんも理解してくれる。それまで頑張りなさい」
そう言ってくれたお母様の言葉を励みに、学生生活を送っていた。
だけど・・・わかり合える前にお父様は逝ってしまった。
お父様が亡くなったことも悲しかったけれど、泣き崩れるお母様を見て、胸が締め付けられるようだったと言った。
当時、高校生だった弟さんも思春期の反抗期真っ最中で、お父様との関係はギクシャクしていたらしい。
一樹さんが歯学部に進学したことで、期待は弟さんに向いた。
そんな息苦しさもあったのではないかと、一樹さんは言った。
当然だけど、そんな一樹さんと弟さんの関係も微妙だったらしい。
それはそうだ。
兄は好きな道に進んだ。
そのツケが弟さんにいったのだから。
当時、一樹さんが帰省しても、ろくに話もしなかったそうだ。
お母さんを大切にしよう
そんな兄弟が心を通わせたのは、お父様の葬儀の夜。
忘れもしない、実家の弟さんの部屋で、二人で泣いたらしい。
お父様と喧嘩別れになってしまったこと。
後悔してもしきれないと泣いたらしい。
そして泣き崩れるお母様を、二人で支えていこうと決めたと。
この時、弟さんは「僕が会社を継ぐ」と言ったらしい。
高校生の男の子がだ。
どれだけの覚悟を持って言ったのだろう。
進路を医学部から、別の学部に変更した。
『まおさん、命はね、残念ながら永遠じゃないんだ。
今ね、生きていることの方が奇跡なんだ。
こんなこと言うと、まおさんに叱られるかもしれないけど、明日、お袋が逝ってしまうかもしれない。
もしかしたら、僕が逝ってしまうかもしれない。
その時に、後悔しないように、お袋を大切にしたい。
もちろん、まおさんのこともだ。』
一樹さんと弟さんが仲良しなのも、お母様を大切にする理由も分かった。
この話を聞かされてしまうと
マザコンも致し方ないかー。
そう思ってしまった^^
むしろ、お母様を大切にする人で良かったと思った。
継いでほしい意思があっても、歯学部に進学させてくれただけでもお父様は心が広いですね。
歯学部ってけっこうな授業料ですし、専門分野だからバイトもままならない。。。
そんな中、自分の意志と違う道の歯学部に通わせてくれて、ましてや一人暮らしをさせてくれるなんてとってもお優しいお父様だと思います。