火に油を注ぐ
まおです。
一樹さんが法要の席で、親族の皆さんに
伯父様との件を話したと聞いたとき、
少し嬉しい気持ちになりました。
今までは何も話せず、ただ堪えることしか
出来なかったのですが、昨日初めて私達の
気持ちを話せた、聞いて貰えた。。。
そう思って気持ちが楽になりました。
親族の皆さんが、どのくらい理解して
下さったかは分かりません。
でも、今まで親族が集まる席に顔を出せず
一樹さんと私が隠れるようにしていた。
まるで私達の方が悪者のようだったから、
私達の言い分を聞いて貰えた。
そんな気持ちでした。
でもこれは間違いでした。
令和
大正、昭和、平成、そして令和へ。
一樹家企業を大きくしたのは
亡くなった一樹さんのお父様。
でも、その前進となる会社は、
既に、大正時代からあったらしい。
長い歴史の中で派閥が生まれた。
早い話が、伯父様派に近いご親戚の誰かが、
法要の席の話に尾ひれを付けて
伯父様の耳に入れたらしかった。
伯父様は、今まで自分の都合の良いように
説明していたので、一樹さんの話と辻褄が
合わなくなってしまい慌てたらしい。
伯父様から怒りの電話が入ったのは、
火曜日の夜だった。
ナンバーディスプレイに。。。
夕食を終え、洗い物をしていた私。
電話が鳴ったので、洗い物の手を止め
電話の前に行って受話器に手を掛けた。
その時、ディスプレイに表示された名前に
驚いて、小さく悲鳴を上げてしまった。
「あっ・・・」
察した一樹さんが、ディスプレイを確認。
『僕が出る。まおさんは寝室に居て』
私に伯父様との話を聞かせないつもりらしい。
「私も隣で聞く」
『寝室に居な』
そんなことを言い合っていた。
電話は呼び出し音が続いている。
10コールは鳴ったと思うが切れない。
伯父様の怒りが伝わってきた。
一樹さんが私に目配せして
受話器に手を伸ばした。
隣で聞いていても良いという事だと思った。
そして一樹さんが受話器を取って
『一樹です・・・』そう言うと同時に、
受話器の向こうから
「どういうつもりだ!」
という伯父様の大きな声が聞こえた。