栗のデニッシュパン


まおです。

一樹さんの弟さんの運転する車が、

角の交差点を曲がって見えなくなった。

『風が冷たいから早く中に入ろう。』

そう言って、私の背中に回してくれた

一樹さんの手は、とても温かかった。
 

歩きながら謝った。

「(弟さんに)悪いことしちゃった。」

『気にしなくて良いよ。久し振りに

弟とゆっくり話が出来たから。』

「うん。。。でも、ごめんね。」
 

一樹さんの荷物を持とうと手を出すと、

小さな紙の手提げ袋を渡してくれた。

『これ、お袋から。まおさんにだって』
 

中をのぞくと、栗のデニッシュパンだった。

私が食欲が無い時、お義母様がお見舞いに

届けてくれたこのパンが美味しくて、

ペロリと平らげたことを覚えていて

下さったのだ。

わざわざ取り寄せてくださったらしい。
 

胸が熱くなった。
 

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夕食は五目うどん

一樹さんがお風呂に入っている間に

急いで夕食の支度をした。
 

法要で豪華な食事が出たらしく

あまりお腹が減っていないというので、

残り野菜で五目うどんを作った。
 

『ひとり(独身)の時は、うどんなんて

食べようと思ったこともなかったけど、

こうやって作って貰うと美味いね。』
 

なんだか、一樹さんの表情が晴れやか?

ご機嫌が良いのとはちょっと違うけど、

もしかして話し合いが上手くいったの?
 

でも話は食事が終わった後が良いだろう。

そう思って、私も食べることに集中した。

だって、沢山食べて体重を増やさなきゃ。
 

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話を切り出したのは一樹さん

食後に、さっそくお義母様から頂いた

栗のデニッシュパンを頂くことにした。
 

キッチンで二人分のコーヒーを淹れた。
 

一樹さんはソファーに座わり寛いでいる。

テレビに向かって明日発表になる新年号の

予想をしていて法要の席の話はしない。
 

コーヒーとデニッシュパンを持って

一樹さんの隣に座った。
 

「頂きま~す!」 そう言って、

パンを手に取って食べようとしたら、

一樹さんが私の手を掴んで、パンを

自分の口に持っていって食べちゃった。
 

「あ~、何するのぉ!」

『今朝、車の鍵を隠した仕返しだ!』

もう、何も言い返せなかった(-_-;)
 

黙っていると、一樹さんがテレビを消した。

『ちょっと話をしようか?』

「。。。うん。」

『今日(法要の席)のことだけどね。』

「大丈夫だった?」

『それがね、伯父も伯母も来なかったよ。』

「えっ?欠席・・・」
 

思いがけない報告に、言葉が続かなかった。

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