食事


まおです。

『ちゃんと食べなきゃ駄目だ。』

そう一樹さんに強く言われたけれど、

一度止まってしまった箸は動かない。
 

うなだれながらダイニングテーブルで、

食べかけのお皿を眺めていた。
 

本当に食欲の無い時って飲み込めない。

汚い話で申し訳ないのだけれど、

口の中に入れたまま、モゴモゴ。

どうにもならなくて涙がこぼれた。
 

しばらくそうしていても喉を通らなくて、

どうしたら良いか分からない。

でも、一樹さんが食べろと言うなら

頑張って食べなくちゃ。
 

辛いな。。。そう思っていると、

ソファーに座っていた一樹さんが、

リビングテーブルをバンと叩いて立ち上がった。

私は飛び上がるほど驚いた。
 

そして私の方に向かって来た。

叱られる。。。

そう思って身を縮めた。
 

一樹さんのあまりの勢いに圧倒された。
 

お義母様の事を悪く言ったので、

気分を害したのか。

泣いている事を叱られるのか?

いつまでも食事が終わらないことに

苛立っているのか?

とにかく怖かった。
 

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情けない?

でも違った。

私の前で立ち止まったかと思うと、

私の頭にそっと手を当てて

髪をくしゃくしゃっとした。

そして私の食器を下げ始めた。
 

『ごめん、ごめん。情けない男だ。

まおさんに当たっちゃった。

無理して食べなくて良いよ。』

そう言うと、キッチンで手際良く片付けを始めた。
 

びっくりしたのと、ホッとしたのとで

私はその場で動けずに居た。
 

すると

『ワインか何か飲もうか?

まおさんも付き合って。』と言う。
 

返事も出来ずにいると理由を聞かれた。

「怖かった。。。」そう伝えたら

『本当に、ごめん。』と頭を下げてくれた。
 

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心と体の傷

ソファーで横並びに座って、

二人でワインを飲んだ。
 

二人とも、無言になってしまった。
 

一樹さんが何を考えているのか分からない。

私は、一樹さんが何を考えているのか、

一生懸命考えていた。
 

すると突然、私の手を握ってきた。

そして私の掌を上に向けて、傷を撫でた。

そう、伯父様に踏みつけられ倒れた時に

掌に負ってしまった傷だ。
 

傷は一樹さんが丁寧に手当てしてくれた。

防犯カメラの映像が証拠になった

かなり傷が酷かったので、

形成外科にも連れて行ってくれた。

それでも傷が残ってしまった。
 

ケロイドというと大げさだけど、

それなりに傷が残ってしまった。
 

怪我をしたばかりの頃は、

買い物で支払いをする為に手を出すと

店員さんが「えっ」という顔をした。
 

その頃に比べれば、傷は綺麗になった。

でも、一樹さんは、かなり気にしていた。

いくら私が

「痛みも無いし大丈夫」と言っても

一樹さんは、ずっと苦にしていたようだ。
 

この日も、私の手を握りながら、

『傷になっちゃって、ごめんね。』

そう繰り返していた。
 

そしてこう言った。

『もう我慢出来ない。

ハッキリさせたい。』

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