ファンデーション


まおです。

歯科医院が併設されている広い自宅で1時間半、独りぼっちで一樹さんの帰りを待っていた。

秋祭りで遠くでお囃子の音が聞こえていたけれど、とても心細かった。

時間が経つほどに妄想が膨らみ、一樹さんと松浦さんがどうにかなっちゃったんじゃないか?などど考えた。

見苦しいほどの嫉妬と妄想が、頭の中で渦巻いていた。
 

そんな不安がMAXの時に、一樹さんがシャツにファンデーションを付けて帰って来たのだ。

もう、一瞬にして頭に血が上った。

「ファンデーションが付いてるよ!」

『えっ?どこ?』

「何してたの?」

『ちょっと待って。まおさん、誤解だよ!』

私は引き止める一樹さんの手を振り払って、寝室に立てこもった。
 

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ドア一枚隔てて

私は、寝室のドアに背を向けて座った。

ドアが開かないようにしたのだ。

男の人の力なら、簡単にドアを押し開けることが出来たと思うが、一樹さんはそんなことはしない。

ドアの向こうから話しかけてくる。

『まおさん、ちゃんと話すから開けて』

「いいよ、聞きたくないもん」

『分かったよ、そうしてなよ』

若干、一樹さんが不機嫌になったのが分かった。
 

一樹さんと松浦さんの関係を疑ってはいないが、不快に思っていることは態度で示したかった。

今思えば大人げない事をしたが、この時は、頭に血が上っていて、自分の行動を制御できなかった。
 

ドアに背を向け、体育座りしながら考えた。

頭の中で、いろんな光景がフラッシュバックする。

松浦さんのグラマラスな体。

手料理の入っていると思われる重箱。

一樹さんのシャツに付いたファンデーション

もっと遡れば

救急車が来た夜、私に向けられた松浦さんの冷たい視線

   初めてのお泊り➀救急車を呼べ!

ラジオ局に現れた松浦さんの表情

   信じられないよ

次から次へと思い出された。
 

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出ておいで

しばらくすると一樹さんが声を掛けてきた。

『まおさん、茶碗蒸しが出来たよ』

台所でガタガタ音がすると思っていたら、一樹さんがレンジで茶碗蒸しを蒸してくれていたようだ。

『お寿司も美味しいうちに食べよう』

いつもの優しい声だった。

でも、私は無視した。

可愛げのない女だ。
 

しばらくすると、また一樹さんが声を掛けてくれた。

『まおさんの好きな、ハーゲンダッツのアイスも買ってきてあるよ。デザートに一緒に食べよう』

アタシは小学生かっ!

アイスにつられて、出て行ってたまるか!

「いらないよ」

『なら、僕がふたつ食べちゃうよ。いいの?』

思わず笑ってしまった(´艸`*)

すると一樹さんがこう言った。

『永遠に立てこもっていられないよ。トイレに行きたくなる前に出ておいで』
 

それはそうだ!

トイレに行きたくなって、ノコノコ出ていくのはカッコ悪い。
 

私は素直にドアを開けて出て行った。

「次からは、トイレに立てこもるよ」

一樹さんは、大笑いしていた。
 

『先に、松浦さんの話をするか、夕食を食べるか、どっちにする?』

そう聞かれたので、私は迷わず

「お腹が空いた」と答えた。
 

一樹さんには敵わない。
 

そして、夕食後、松浦さんとの関係を話してくれた。

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