秋祭り
まおです。
土曜日にラジオの仕事を終え、
タクシーで一樹さんの自宅へ。
この週末は、秋祭り。
土日と一緒に過ごす約束でした。
私は女性として、この夜、起こり得るであろう出来事に対する最大限の心の準備をして出かけました。
でも、なかなか二人の思うようにはならず。
長く切ない夜となってしまいました。
心弾ませて
一樹さんの自宅に着いたのは18時頃。
近くのお宮からお囃子の音が聞こえます。
歯科医院の駐車場には、既に患者さんの車はなく、従業員さんが中で後片付けをしているようでした。
合鍵を使って自宅に入った私は、急いで晩ご飯の準備を始めました。
準備と言っても、一樹さんが『まおさんに負担が掛からないように』とお寿司を注文してくれてあったので、簡単なお吸い物と茶碗蒸しです。
『まおさんだって仕事で疲れて帰って来るんだから、頑張らなくてもいいよ。』と言ってくれたので、その言葉に甘えました。
慣れない台所で支度をしながら、お風呂にお湯も張らなくちゃと、あたふたあたふた。
湯張りはこのボタンで良かったかな?とドキドキしながらポチッとな。
心配で湯船を覗いて、しばし待つ。
無事にお湯が出てきて胸をなで下ろす。
なんだかとても新鮮な気持ちだ^^
一樹さんが帰宅する
しばらくすると、1階の歯科医院から自宅へ続く扉が開く音がした。
一樹さんが仕事を終えて戻って来る!
一樹さんが階段を上がって来る気配を感じながら、私はとっさに考えた。
可愛らしく出迎えるのが良いのか?
それとも元気良く?
いや、爽やかなのが良いかな?
一樹さんは、恐らく
「可愛らしい」のが好みだろう。
ここ一番で
演技力が試される!
私は、2階のリビングのドアを体半分くらい開けながら、チラッと顔を覗かせて声を掛けた。
「お帰りなさぃ!」
『ただいま^^』
仕事モードだった一樹さんの顔が、一気にほころぶ!!
やった!成功だ\(^o^)/
でも、何だか凄く照れくさい。
二人とも照れ隠しで、意味もなくへらへらしながらリビングへ。
『お出汁の良い香りがするね』
「茶碗蒸しを作ろうと思って^^」
『なんか良いね。こういうの^^』
一樹さんの理想に近づけただろうか?
二人きりの夜になるはずだった
一樹さんが着替えてくると言うので、お風呂をすすめた。
「お風呂沸いてるよ!」
『おっ、気が利くね^^
まおさんも一緒に入る?』
「入らない!」
『%#◇!¥〇*?Σ@&』
何を言ってるかよく分からなかったけれど、一樹さんはムニャムニャ言いながらお風呂場に消えて行った。
一樹さんがお風呂に入って少しすると、玄関チャイムが鳴ってお寿司屋さんが配達に来てくれた。
私は玄関でお寿司を受け取ると、しっかり施錠を確認した。
お寿司だけじゃなくて、フライの盛り合わせも注文してくれたらしい。
玄関先で中身をチラ見していると、再び玄関チャイムが鳴った。
お寿司屋さんが、何か忘れ物でもしたのかな?
そう思った私は、玄関モニターを確認することなく、何の警戒心も無く玄関ドアを開けてしまった。
『わぁっ!』
自分でも驚くほどの大きな声が出た。
そこには、歯科医院を辞めた
歯科衛生士の松浦さんが立っていた。