名前を呼ばれない
まおです。
入籍を済ませ、大急ぎで帰路についた一樹さんと私。
通勤の車で渋滞し、医院に着いたのは予定より20分遅れだった。
玄関の鍵を開けるのももどかしく、二人で2階の自宅に駆け上がった。
階段を駆け上がりながら、一樹さんは服を脱ぎ始めていた。
『えっと。。。ごめん、白衣持ってきて!』
「うん、待ってて!」
『あの。。。脱ぎっぱなしでゴメン』
「いいよ、早く行って!遅刻しちゃう!」
『じゃぁ。。。行ってくるね。』
「いってらっしゃい!」
リビングのドアを勢いよく開け、医院へ降りて行った・・・と思ったら、すぐに戻って来た。
「えっ?どうしたの忘れ物?」
『その。。。チュ~忘れたでしょ?』
「あはっ、そうだね(●´ω`●)」
で、チュ~して医院へ降りて行った。
と思ったら、また戻って来た(ー_ー)!!
「何?何?今度は何?」
『。。。その、結婚指輪しまっといて。』
そう言って、さっきはめたばかりの結婚指輪を外して手渡された。
まぁ仕事柄、仕方がないね。
私の名前は。。。
ここまでの流れの中で、私は一樹さんの異変に気付いていた。
そう、私の名前を一度も呼ばないのだ。
いつもなら『まおさん!まおさん!』って連呼するのに、今日は『えっと。。。』だの『その。。。』だのしか言わない。
『。。。』の部分は恐らく『まお』と私の名前を呼びたいのだろうが、呼べないらしい。
『今日から、まおさんの事、名前で呼ぼうと思う。』なんて関白宣言(?)したくせに、照れ臭いのか呼べないらしいのだ(´艸`*)
途中から、可笑しくって吹き出しそうになったけれど、ぐっと我慢した。
“入籍日に奥さんの呼び方を変えたのは英断だと思う”とコメントを頂いておりましたが、ごめんなさい。
いまだに『まお』とは呼ばれておりません(笑)
入籍したとたんに、私の名前は『ねぇ』とか『あのさ~』になっちゃったみたい(^_^メ)
入籍を報告
とにかく、診察時間に滑り込みセーフで出勤して行った一樹さん。
一樹さんが医院に下りて行って間もなく歓声が上がった。
程なくして、拍手の音が聞こえた。
一樹さんが、私と入籍したことを、スタッフさんに伝えたらしかった。
医院から「おめでとうございます!」の声が聞こえて来た。
そして、その後、そろそろお昼の休憩時間かなという頃、内線で一樹さんから『医院に顔を出して!』と呼ばれた。
急いで下りて行くと、スタッフさん達から、入籍祝いの胡蝶蘭を頂いた。
思いがけないお祝いに、嬉しくて涙が出た。