誘いに乗っていたら?
まおです。
あれ以降、森山からの連絡は途切れました。
一体、何だったんだろう?
当時は、スマホを盗まれたか何かで、電話番号を解約したのかな?
もしかして、会社経営が上手くいかなくて、債権者から逃げるために電話を解約したのかな?
まさか事件に巻き込まれた?
とか、イロイロ考えました。
でも、どの理由もしっくりきません。
何だか気持ち悪いなと思いつつ、いつしか忘れてしまいました。
叔父様の言葉で思い出した
それが叔父様の「別れさせてやる」という言葉で、あの時のことを思い出しました。
もしあの時、森山の誘いに乗って、ノコノコ出かけて行ったとしたら、どうなっていたでしょう?
夜、JRの駅で待ち合わせ、車に乗る所を写真に撮られたりしたら?
レストランで食事をしている所を撮られたりしたら?
その後、ホテル街を車で走っているところを撮られたりしたら。
ホテルに入る、入らないなんて関係ない。
そんな場所を走っているところを撮られたら、即アウトだ。
実際に私は、叔父様の雇った探偵に、男性と食事をしている所を撮られている。
ドリンクバーの前で、何を飲もうか相談している様子は、恋人同士が仲良く寄り添っているように見えた。
写真の撮り方ひとつ、見る人の見方ひとつで、どんな印象にも受け取られてしまうということを知っている。
恋愛トラップだとしたら?
本当に馬鹿らしい考えだと思う。
恐らく、私の妄想かもしれない。
でも、もしこれが叔父様の仕掛けた、恋愛トラップだとしたら?
「仕事の打ち合わせ」と言って出掛けた私が、見知らぬ男性の車に同乗して、あらぬ場所に入って行った所を写真にとられ、それを一樹さんが見たら?
考えるだけで、ゾッとする。
一樹さんに聞いてみた。
「叔父様は、結婚しても別れさせるって言ってたね」
『そんなこと出来るわけないだろ』
一樹さんは、鼻で笑った。
でも、次の瞬間、顔色が変わったように見えた。
「別れさせ屋って知ってる?」
『なにそれ?』
「恋愛トラップを仕掛けて、夫婦や恋人同士を別れさせるよう仕向ける仕事を請け負う人たちが居るんだって」
『恋愛トラップ?』
「そう、罠を仕掛けるらしいよ」
『わっ、罠?』
「へっ?心当たりがあるの??」
『なっ、ない。ないよ、ないっ!』
何だか大慌てな様子に見えた。
もしかして一樹さんも、何か思い当たることがあったのか?
まさか、引っかかったんじゃないだろうねぇ( ̄▽ ̄)