媒酌人の話
まおです。
一樹さんは、世間話の延長のような感じで、サラリとこう言ったのです。
『仲人の件なんだけど、叔父が辞退したいって言ってきたんだ』
一度引き受けた仲人を断る。
相当の理由がなければ、常識ではあり得ないことだと思いました。
これが「長男だけど末席に座る」と言う意味なんだと思いました。
恐らく、これから全ての事がこうなるんだろう。
最初は「あぁ、そうきたか」と思う程度でした。
でも、だんだんと悲しいというか虚しいと言うか、言葉に出来ない気持ちが一気に吹きあげてきました。
一樹さんに申し訳ないような。
何も出来ない自分が情けないような。
叔父様に対する怒りのような。
時間と共に、何とも言えない感情が沸き上がって来て、気が付いたら号泣モードでした。
仲人・媒酌人のこと
驚いたのは一樹さんでした。
『こんなに泣かれるとは思わなかったよ(‘_’)』
そう言って、私の背中をさすってくれました。
家族で会食の予定が披露宴になったから「私達(叔父様御夫婦)では力不足」と辞退されたという話でした。
「辞退」と言えば聞こえはいいですが、要は「断られた」ということです。
軽く見られた気がして、悔しくて涙が止まらなくなりました。
私のことは、どうでもいいのです。
でも、一樹さんにそんな対応をしたことが、許せないような気持ちになりました。
持っていたタオルで顔を覆って、うつむいて・・・号泣です。
一樹さんが『泣くような事じゃないよ。大丈夫だよ』と慰めてくれればくれる程、悔しくて涙が止まらなくなるのです。
自分でも、涙が止まらなくて困り果てた頃、一樹さんが耳元で囁きました。
『まおさん、そろそろ涙止まるかな?僕、今、結構な悪者になってるんだけど・・・』
既に葉桜でしたが、周りにはお花見に来た人達が何人か居ました。
その人達の視線が痛いと言うのです。
恐らく、その人達の目には、一樹さんが「彼女を泣かす悪い男」に映ったでしょう。
『帰りにさ、ケーキ屋さんに寄ってあげるから、もう泣かないで』
そう言われて、やっと泣き笑いになりました。
結婚式のこと
自宅に戻ると、一樹さんがコーヒーを淹れてくれて、二人でケーキを頂きました。
「挙式も披露宴もやめようか?」と言うと、
『まおさんの花嫁姿も見たいし、御両親もお袋も楽しみにしているから、ちゃんと挙げよう』
そう言ってくれました。
仲人(媒酌人)は、お義母様が探して下さるそうです。
『お袋、顔が広いから大丈夫だよ』
叔父様に角が立たず、晴れの日に相応しい媒酌人を探して下さるそうです。
早いもので、あれから一週間。
今日もこれから一樹さんの自宅にお邪魔します。
そして明日は、式場を見学に行く予定です^^
泣いたり笑ったりの繰り返しですが、順調に結婚に向けて進んでいます。
一樹さんから頂いた、婚約指輪も指に馴染んできて、婚約したという実感も沸いてきました。
結婚まで、今後も沢山の問題が出てくると思いますが、一樹さんが隣に居てくれたら、何でも乗り越えられる自信が付きました。