素行調査報告書のこと
まおです。
水曜日の夜に、一樹さんとは2時間近く話をしました。
1週間連絡を取らなかった理由とお詫び。
素行調査を行ったのが、叔父様の依頼だったこと。
実家での話し合いの内容。
その結果を、私にも承諾して欲しいこと。
そして、私が仕事を続ける条件。
それで話を終えようとした一樹さん。
あのことは、気にしていないのだろうか?
「調査報告書の件で、私に聞きたいことがあるんじゃないかと思ったんだけど・・・」
一樹さんは、サラッと言った。
『何も無いよ』
「無い?」
『無いよ。何か聞いて欲しかったの?』
「いや、そうじゃないけど」
『僕が何か勘違いしたと思った?』
「そんなことない」
『まおさんのことは、僕が一番分かっているつもり』
「うん」
『それでいいでしょ?』
何も言わない方が良いのかな。
そう思った。
あの時、私に調査報告書を見せたのは、私に釈明して欲しかったからじゃなかったのかな?
調査報告書があることを隠しておくことも出来たのに、何のためらいもなく見せたのは『釈明してみせて』という意味ではなかったのか?
真相は分からないけれど、少なくとも今の一樹さんは、説明して欲しいとは思っていないようだった。
交際していた男性の事も、A総合病院を受診した理由も、話さずに終わった。
自惚れかもしれないけど、今の二人には些細なことに思えた。
そんなことで、二人の関係が壊れるとは、到底思えなかった。
それ以上に大変なことを、二人で乗り越えていく覚悟が出来たから。
追加調査のこと
最後にひとつ確認した。
「まだ、私の身元調査ってしてるのかな?」
一樹さんの話だと、叔父様とも話が付いたし、もうしないように伝えてくれたらしい。
正直、この1週間、外出していても、自分の後ろが気になって仕方なかった。
誰かに付けられてるんじゃないか。
カメラを向けられてるんじゃないかって。
男性スタッフと、お昼休憩に食事に出掛けることも避けたし、仕事帰りに、コンビニに寄り道することもはばかられた。
そんな緊張から解き放たれると思うと、安心出来た。
私にとって、辛い1週間だったけれど、一樹さんは、もっと悩んでいたのかな?
話してくれたらよかったのに。
今回の件で感じたのは、私と一樹さんの結婚は、一樹家にとって歓迎されないことなのかな?
長男が末席に座るって、具体的にどういうことになんだろう。
縁を切ったとまではいかなかったようだが、丸く収まったという印象もない。
でも、最後の最後に一樹さんが言ってくれた
『お袋は、まおさんの味方だよ』
という言葉が嬉しかった。
お義母様、素敵な人なのかもな。