茶室にて
まおです。
掛物(掛け軸)のお話を伺いながら、震える手で薄茶を頂きました。
もう緊張で失神しそうでした。
お義母様の声が遠くの方で聞こえ始め、限界かもと思い始めた時、一樹さんが話し始めました。
『まおさんと、なるべく早く結婚したいと思っているんだ』
「そうね、それが良いわ」
えっ!私、合格ですか?
心の中でガッツポーズをしたv(^_^)v
話はどんどん先に進む。
『それで、5月に結納をして夏に入籍をしたいと思っているんだけど』
「それなら急がないとね。お仲人さんは、どなたにお願いするの?」
『仲人は無しでいいよ』
「何言ってるの!媒酌人が居なかったら、結婚式の時に困るでしょ!」
『結婚式はしないから』
「はっ?一樹、今、なんて?」
結婚式をすることが条件
お義母様は、結婚式をしないなんて有り得ないとおっしゃった。
『だって俺・・・』
「・・・それは関係ないでしょ」
『だけどさすがに・・・勘弁』
「・・・」には、恐らく「再婚」とか「2回目」とかいう単語が入ると思うのですが、お義母様も一樹さんもはっきり言わない。
マシンガントークのお義母様も、発言して良い事と悪い事を、しっかり選り分けているようだ。
結婚式をしないという現代の考えが、お義母様の年代では理解出来ないようだ。
「大切に育ててこられたお嬢さんの花嫁姿が見られないなんて・・・まおさんのご両親に申し訳ない」と。
合わせて、土地柄もあるようで、とにかく冠婚葬祭を派手にやる地域らしかった。
「仲人を立て結納をする事。結婚式もきちんとする事。それが条件」
お義母様は、一樹さんに向かって、ハッキリ&キッパリ言い切った。
一樹さんは思いもよらない展開に、押し黙ったまま。
顔を覗き込むと「困ったなぁ」という表情をしていた。
普段、決断力のある一樹さんだけど、さすがに返事が出来ないようだった。
こんな一樹さんを見るのは初めてだ。
業を煮やしたお義母様が、私に向かって一言。
「まおさんだって、花嫁衣装を着たいでしょ?」
ゲッ!?私に振ります!?
ここはお義母様に従って「はい」と答えるべきか?
それとも一樹さんの気持ちを汲んで「いいえ」と答えるべきか?
いきなり、とんでもない決断を強いられることになった。
ヤバイ、どうしよう(・_・;)
どちらに付く?
「はい」か「いいえ」か?
じっくり考えている時間はない!
その時、どこからか聞こえた!
長いものに巻かれろ!
私は天の声に従った。
「はい!ウェディングドレスを着たいです!」
一樹さん、裏切ってごめんよ。