ミニサプライズ
まおです。
一樹さんが仕事から戻って来たのは19時過ぎだった。
『バレンタインデーに残業させちゃったら、あいつらに何言われるか分からないからさぁ』と笑った。
『あいつら』とは信頼する従業員さん達のこと。
そのくらいバレンタインデーを意識していたのなら、私の行動に対しても空気を読んで欲しかった。
何で、舞台裏をのぞきに来ちゃうかな(;_;)
それでも、バレンタインデーの夜の食卓を見て、一樹さんはとても喜んでくれた。
ビーフシチューにホームベーカリーで作った焼き立てのパン。
シーフードサラダに手作りのチョコレートケーキ。
一樹さんの選んでくれたワインで乾杯。
ワインってアルコール度数が高いので、ひと口でつむじまで真っ赤になってしまった私。
慌てて一樹さんが、ワイングラスに氷を5~6個放り込んでくれた。
ワインを薄めて飲めって?(~_~メ)
『テーブルセッティングも素敵だね。レストランみたいだ^^』
ケーキも美味しいと言って食べてくれたけど、ココアパウダーを気管に吸い込んじゃったみたいで、ゲホゲホして可哀想だった(・_・;)
サプライズ本番!
片付けが終わってひと段落。
ソファーに座って寛いでいる一樹さんに伝えた。
「バレンタインのプレゼントを用意したの^^」
『まだ何か用意してくれたの?』
そう言う一樹さんに、資格取得証明書を見せながら話した。
「マッサージの資格を取ったの」
『マッサージ?』
一樹さんは不思議そうな顔をしていた。
『何でマッサージ?まおさん、新規事業でサロンでも始めるの?』
「違う違う。そうじゃないよ^^」
私は急いで説明をした。
一樹さんにしてあげたくて
仕事は好きだから、忙しいのは苦にならないと言う一樹さん。
『忙しかった』と口にすることはあるけれど『疲れた』とか『大変』と言う言葉を聞いた事がない。
それでも仕事終わりに、無意識に首や肩を回していたり、腰に手を当てトントンと叩いている姿を何度か見た。
診察中は気が張っていても、体は正直だ。
1日の終わりには疲れが出るんだろうなと感じていた。
「一樹さんの疲れを癒してあげたくて取ったの」
『東京の住所になってるけど?』
「ちゃんとした知識を身に付けたくて、東京の教室に通ったの」
素人が中途半端な知識でマッサージをして、一樹さんの筋肉や筋を痛めてしまうのが怖くて、遠くてもしっかり学べる所を選んだ。
もちろん国家資格などではなく、民間の資格だけれど、自分が実際にマッサージを受けて、とても気持ちいいと感じたので受講を決めた。
「今からマッサージするから、ここに寝て^^」
私はそう言うと、驚いてポカンとしている一樹さんの手を引っ張って誘導した。