コーヒーを飲みながら
まおです。
まだ、手も繋いでいない一樹さんに「裸を見られるより恥ずかしい」なんて口走ってしまった私。
確かに、自爆した。
真っ赤になった頬っぺたは、なかなか元に戻らず、ハンカチで押さえながら休憩室へ戻った。
一樹さんは、笑いをこらえながらインスタントコーヒーを入れてくれた。
しばし、無言でコーヒーを飲む私。
一樹さんは『もういいから、機嫌直しなよ』と言う。
別に、機嫌が悪いわけじゃない。
どうしていいか分からないだけだ。
一樹さんは、カラーボックスからチョコレートやクッキーを取り出して、テーブルの上に広げ始めた。
どれでも好きなものを好きなだけどうぞと言う。
勝手に食べたら従業員さんに叱られるよと注意すると『全部経費で買ってるから大丈夫』だと。
昼食のお弁当もおやつも、全て経費で負担してあげているらしい。
ならばと「お煎餅が食べたい」と言うと、一樹さんは大袋を開けて『お好きなだけどうぞ!』とテーブル一面に並べてくれた。
お昼寝しない?
お煎餅をバリバリしながら、テレビをつけて2人でお昼のワイドショーを見ていた。
安室奈美恵ちゃんが引退だとか、また選挙かとか、ダイソンが車を販売するとか、本当に他愛ない話だ。
話疲れたのか、だんだん無口になっていく一樹さん。
するといきなり『ねぇ、まおさん、お昼寝しない?』と聞いて来た。
おっ、おっ、お昼ねぇ!?
え~、なに、どういう意味?
もしかして誘われてるのぉ?
こんな昼間で、外もまだ明るいのに?
いや、明るいとか暗いとか関係ないか。
それに今日は、夕方にはお別れしなくちゃならない。
暗くなるまで待ってなんて言ってる時間はない。
でも、いきなりすぎやしないか?
もしかして、最初から計画的だったの?
でも女性には、色々準備というものがある。
どうすればいいの?
なんと返事をすればいいの?
本当に昼寝だった
高鳴る胸を押さえながら、返事に困っていると、一樹さんは『俺、昼寝してきてもいいかな?』と。
あれっ、さっきと、ちょっと言葉のニュアンスが違うぞ。
さっきは『お昼寝しない?』だったけど、今度は『昼寝してきていい?』だ。
私が「うん、どうぞ。」と返事をすると、一樹さんは『自宅のベットで寝てくるから、20分たったら起こしてね。』と言う。
どうやら、いつも仕事の休憩時間に15~20分お昼寝をするらので、それが習慣になっていて、この時間になると眠くなってしまうらしい。
しかし、今日は急に私を呼んだので、部屋が片付いていないから、まおさんは休憩室に居てねと言うのだ。
そう、ただ単に眠くって、本当にお昼寝がしたいだけだった。
何だよ、紛らわしい。
その後、私を休憩室に残して、一樹さんは2階の自宅にあがっていった。
良かった、早とちりして、また自爆するところだった。
それにしても、従業員用の休憩室に残され、一人でテレビを見るなんて。
なかなかレアなデートだ。