押し問答
まおです。
一樹さんの元奥様とのウェディングアルバムを、見たい私と、見せたくない一樹さん。
「見たい」
『ダメ』
押し問答が続いた。
最後の方は、二人とも、何だか可笑しくて笑っちゃって^^
もう止めようか?
そんな雰囲気になっていた。
アルバムの中身は何となく想像がついた。
神殿で三々九度を交わす二人。
チャペルの十字架を前に、指輪交換をする二人。
ドレス姿の新婦を前に立たせ、新郎がバックハグをして頬を寄せ合う二人。
最近は、流行りの「壁ドン」フォトを希望する新郎新婦も居る。
一樹さんが挙式したころには、壁ドンなんて無かっただろうけど、仲良く体を寄せ合い眩しい笑顔で写真に納まる二人が想像できる。
恐らく、メイキングも含まれていて、新婦のお支度の様子を、遠くから優しく眺める新郎のフォトなんかも入っているだろう。
辛いだけの思い出
「見せてもらえたら、自分の気持ちに区切りがつくかなと思ったけど、もういいや」
『区切り?』
上手く説明できない。
嫉妬とか、ヤキモチではない。
不思議な感情だ。
私の「区切り」と言う言葉を、一樹さんがどう受け止めたのかは分からない。
でも、一樹さんはこう言った。
『まおさんの、考えているようなアルバムじゃないよ』
「ん~?」
ちょっと言われた意味が分からなかった。
困って黙り込んでいると、一樹さんはポツリと言った。
『カッターで切られてる』
「はっ?」
『全ての写真が切られてるんだよ』
「なんで!?」
『切った人に聞いて欲しいな^^』
絶句してしまった私に一樹さんは言った。
『離婚って、そういうものだよ』
恐らく私は、この瞬間に、パンドラの箱を間接的に開けてしまったのだと思う。
開けてはいけない箱、覗いてはいけない場所があることを知った。