言葉を失う


まおです。

病院のデイルームで、たった2回。

たった2回顔を合わせただけの女性から

「抗がん剤の副作用で・・・」

そう告白されて面喰いました。
 

若くてもガンになるという知識はありました。

でも、恐らく同世代。

素直に「驚いた!」と言えばいいのか、

「大変ですね」とお見舞いを言えばいいのか。
 

どうしたらいいか分からずに黙っていると

「ごめんね。いきなりでビックリするよね^^」

そう言って、その女性はケラケラと笑った。
 

その笑い方が、もの凄く明るくて。

楽しそうと言うと変だけど、

でも井戸端会議の世間話のようで、

深刻さは全く感じられなかった。
 

だから、副作用が出ながらも、

治療は上手くいっているんだと思った。
 

だから私も笑顔で返した。
 

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身の上話

私達はそのままデイルームの片隅で

飲み物を口にしながら話を始めた。
 

彼女の名前は、華さん。

同い年くらいかと思っていたけれど、

私より五つ年上のお姉さん。

抗がん剤治療が終わったばかりと

明るい表情で話してくれた。
 

ただ、後から分かったのですが、

「終わった」のではなく「中止」した。

そういうことだったらしいのですが、

私は全く気付きませんでした。
 

小柄で丸顔で愛想が良くて明るくて

いつもケラケラっと笑う華さん。

話していると楽しい気持ちになりました。
 

「まおさんは何の病気?」と聞かれ、

「ちょっと心を病んじゃった」と言うと

「私の元気を分けてあげるわ」と。
 

だから華さんの病状が、深刻なものであるとは思っても居ませんでした。
 

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羨ましい

それから華さんと私は、

お互いの病室に通うようになりました。
 

お互いに同じ階の個室だったので、

どちらかの部屋で話をして過ごしました。
 

ただ華さんは点滴をしていることが多く、

どちらかと言えば私が訪ねていたかな?

華さんお気に入りのMコーヒーをお土産に、

1日に1度は顔を出していました。
 

お互い気分が良ければ、デイルームで

外を眺めながら話をすることもありました。
 

いつだったかな?

お見舞いに来た一樹さんが、

私が病室に居ないことに驚いて、

血相変えて探しに来た姿を見た華さんが

「まおさんの彼氏さんって超過保護!」

そう言って笑ったことがありました。
 

「まおさんが、羨ましい」

てっきり一樹さんとの事だと思いました。

仲が良くて羨ましい・・・そういう意味だと思っていました。
 

でも違った。

違ったんです。

あの時のことを思い出すと、

今も胸が張り裂けそうです。

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