まおです。
昨夜のデートは、気もそぞろだった。
彼に気付かれないように。
彼に怪しまれないように。
「あなたが浮気しているなんて、微塵も疑っていませんよ。」
「あなたが浮気しているなんて、全く気付いていませんよ。」
そんな涼しい顔をして過ごした・・・つもり。
でも、きっと不自然だったに違いない。
無口な彼との沈黙が怖くて、必要以上にペラペラしゃべっちゃった。
無意識のうちに
「仕事は何時に終わるの?」
「最近は忙しいの?」
「心配な患者さんは居るの?」
「晩御飯はどうしているの?」
「いつも何時に寝るの?」
と、質問攻めにしていた。
とんでもなく、うっとおしい女だ。
こんな、うっとおしい女の話を聞いてくださる心優しい方!
どうぞこの先も読んでいって下さい。
お風呂場の排水口の女の髪毛が無くなっていた
昨夜も、彼の自宅マンションでシャワーを借りた。
「あれ」がどうなっているのか確かめなければならない。
浴室の洗い場に入るとすぐ、私はシャワーを勢いよくひねった。
排水口の蓋を開ける音が、彼に聞こえないよう、シャワーの音でごまかそうと思ったのだ。
指先に全神経を集中した。
滑って『ガシャン!』なんて音がしたら気付かれてしまう。
そんなヘマをするわけにはいかないのだ。
そっと排水口の蓋を上げてのぞき込む。
「ん?」
「ない?」
先週あった、ウェーブの掛かった長い髪の毛がないのだ。
排水口は綺麗に掃除されていた。
恐らく最近。
昨日か?今日か?
そのくらい綺麗に掃除されていた。
さすが綺麗好きの彼。
定期的に掃除しているに違いなかった。
車のナンバーを記憶した
髪の毛がなくなっていたので、ちょっと拍子抜けしてしまった。
残念なような、ホッとしたような。
しかし彼の自宅をよく観察すると、あることに気付いた。
それは台所の食器の水切り箱。
ふた組ずつある食器の位置が、先週と変わっている。
食事をする時に、全ての食器を使ったのだろう。
全ての食器の伏せ方が、先週と大きく変わっていた。
「やっぱり、誰か来ている。」そう思った。
いつも通り、22時過ぎに駅に送り届けてもらった。
駅までの道順をしっかり頭に入れた。
これは探偵事務所に尾行をお願いする場合、あらかじめどのルートを使って移動するか予想するため。
人は走り慣れた道を行くから。
そして、駅に着いて別れた後、走り去る彼の車のナンバーを暗記し、急いでスマホにメモした。
もちろん、探偵事務所に車種とナンバーを伝えるためだ。
探偵事務所のアポは明日。
不思議だけれど、ちょっとワクワクしている自分が居る。
でも反対に、怖い気持ちになる時もある。
情緒不安定だ。

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