まおです。
南さんから「会って相談したいことがある」と言われ、いつものJRの駅で待ち合わせをした。
私と南さんの自宅の、ほぼ中間地点が、このJRのA駅。
そう、かつて私と南さんが、婚活で出会った彼(ゲス野郎)とのデートの待ち合わせに使っていた駅だ。
このA駅に立つと、何とも言えない気持ちになる。
まだ、ゲス野郎との事が、完全に過去のことになっていないと気付かされる。
お願いがある
南さんと、例のドリアを食べたファミリーレストランに入った。
席に座ると、あの夜のことが鮮明に思い出された。
ケーキとドリンクバーを注文すると、さっそく私達は前のめりになって、ひそひそ声で話をし始めた。
夏休みで混み合う店内で、私達のことなど気に掛ける人など居ないと思うが、話の内容が内容だけに、周囲の人には聞かれたくない。
まず、南さんから、日曜日の報告があった。
内容は昨日、電話で聞いていた通りだ。
問題は、マンションから一緒に出てきた女性だ。
顔を確認することも出来ず、ゲス野郎が、その女性をどこまで送り届けたかも確認出来なかった。
時間的に、恐らくJRのA駅と思われるが、上り電車に乗ったのか?下り電車に乗ったのか?分からない。
駅にはバスのロータリーもあるが、バスで帰宅出来る距離なら、彼が車で送ったはずだ。
近くに、女性の実家か一人暮らしの自宅がある可能性もないとは言えないが、そんなに近くに女性が住んでいたら、私や南さんと複数交際をしたり、南さんをゲス野郎の自宅に泊めたりは出来なかっただろう。
総合的に考えて、JRを使ってある程度、遠くまで帰って行った可能性が高い。
と、ここで南さんが、小さいけれど、はっきりした声でこういった。
「尾行を手伝って」と。
復讐計画
思わず「え~~~っ」と声を上げてしまった私。
だって、私が示談にしたのを、南さんも知ってるでしょ?
示談した後で、まだゲス野郎の周囲を詮索してるってバレたらヤバイでしょ?
そう言って断ったのだが、南さん曰く「バレなきゃ大丈夫!」
ん~、あんまり大丈夫じゃないんですケド。
車を運転してくれるだけでいいからと言う南さん。
南さんの復讐計画はこうだ。
まず、彼の婚約者を突き止める。
恐らく、先日の日曜日に、ゲス野郎と一緒に居た女性だと思う。
女性を尾行して、声を掛け、婚約者と分かったら、ゲス野郎の悪事の全てをぶちまける。
そうすれば、婚約は破談になり、ゲス野郎に最大の復讐が出来る。
こんな筋書だ。